忘れたい夜ほど、なぜか香りだけは残る。シーツに移った甘さとか、髪にふれた指先の気配とか、帰ったあとにひとりで気づく残り香とか。形のないものほど、記憶に長く居座るのかもしれないわね。だから私は、夜に使うものを少しだけ選ぶ。あとで思い出すためじゃなくて、その瞬間をもっと深くするために。秘密って、案外そういうところに宿るものよ。
忘れたい夜ほど、なぜか香りだけは残る。シーツに移った甘さとか、髪にふれた指先の気配とか、帰ったあとにひとりで気づく残り香とか。形のないものほど、記憶に長く居座るのかもしれないわね。だから私は、夜に使うものを少しだけ選ぶ。あとで思い出すためじゃなくて、その瞬間をもっと深くするために。秘密って、案外そういうところに宿るものよ。